春の始まり高尾山へ
春の始まり高尾山へ
リーダー投稿

春の始まり高尾山へ

【 登り 6号路 下り4号路から表参道 】
登山日 2018年3月19日

文・写真/名古屋メイ

1. 春の声の聞こえる山へ
2. 6号路の春は始まったばかり
3. 登頂!そして、いただきます!
4. 下りは4号路から表参道へ
5. 下山後にまた、いただきます

1.春の声の聞こえる山へ

キューン、
くうーん、
ココ、クク、ロロロ。

相方のKさんは、「子犬が鳴いているみたいだ」と言っています。どう考えても、カエルの声には聞こえないのです。気をつけていないと、沢を流れる水の音に消されてしまいそうな、でも耳で一度とらえたら次はハッキリとわかる声。
 「カエルさーん」
 あたりに人がいないことを確認して、そっと声をかけてみますが、声の主は姿を見せてくれません。
 春の高尾山。人通りの少ない6号路は、小さな春の息吹にあふれていました。

 みなさまはじめましてこんにちは。名古屋メイと申します。
 山歩きが好きな、ライター兼フォトグラファーです。
 森林限界を越えないことをモットーに、20年くらい前から低い山をウロウロして楽しんでいます。
 ここ数年は、林業のボランティアにはまっています。木を切り倒したり枝を払ったりするのが楽しくなって、純粋な「山歩き」からは遠ざかっていました。その林業も、あれこれ重なってしまった結果、昨年はまったく山に入れず……。

 運動不足とストレスを抱えた身体と頭が、「ぼちぼち山に行かないとヤバいですよ」とささやきはじめたので、素直に従うことにしました。

 標高1000メートルくらいの山なら単独行しちゃっていたのも、はるか昔の話。初心に返りましょう。高尾山に行くことにしました。

▲ 筆者近影
 高尾山が楽しいのは、その日の気分や体調によってルートを選ぶことができるところ。自信がなかったらケーブルカーに乗りましょう。ちょっとスリルを楽しみたかったら、リフトもおすすめです。
 ケーブルカー駅前の広場で行動食を食べつつ、きょうはどこから登ろうかと悩みます。

 今回持参した行動食。
●あんパン(炭水化物と糖分が一緒にとれる優れもの。ひと口サイズのものが食べやすいので重宝しています)
●黒糖クルミ
●カシューナッツ(無塩)
●板チョコレート
 自分が食べて元気になるもの、好きなものを持って行くのが一番です。でも、万が一遭難しても一晩くらいはしのげることを想定して選んでください。
 高尾山で遭難する人は少ないでしょうが、山は山です。一晩しのげるくらいの水と食べ物は持っていましょう。

 ……稲荷山コースは、久しぶりの脚には厳しそう。かといって、ケーブルカーでは物足りないかなぁ。表参道は帰りにとっておこうかな。3号路って歩いたことあったっけ?
 しっかりストレッチをして、出発。沢沿いの6号路を歩くことにしました。

■今回歩くルートと平均所要時間(参考:『山と高原地図』昭文社)
京王線 高尾山口駅――5分――ケーブルカー清滝駅前――10分――妙音橋分岐――15分――水行道場手前分岐――60分(途中、稲荷山コースへの分岐あり)――表参道(1号路)分岐――5分――山頂――4号路分岐(途中、いろはの森分岐あり)――45分――表参道(1号路)分岐――10分――ケーブルカー高尾山駅――60分――ケーブルカー清滝駅前

 久しぶりなので平均時間はあまり気にせず、でもダラダラしないように行きましょうー!

2.6号路の春は始まったばかり

 病院の手前で舖装道路とはお別れ(妙音橋分岐)。登山口はちょっとものものしい雰囲気です。それもそのはず、この先には水行道場があります。気軽に登ることができる
 高尾山は、信仰の山でもあるのです。
 この分岐を右に進むと、水行の滝のすぐ近くまで行くことができます(水行道場手前分岐)。場合によっては実際に滝に打たれている方を見ることも。
 修行中の方にカメラを向けることは、その方にも高尾山にも失礼なので、絶対にしないでくださいね。私も何度かお見かけしたことがあるので、びっくりする気持ちと、見ちゃった!という少しうれしい気持ちはよくわかります。
でも、静かに、そーっと通りすぎるのがマナーですし、肖像権をめぐるトラブルなどに巻きこまれないための心得です。
頭の上でミソサザイが大きな声で鳴いているのですが、どこにいるのか探そうと立ち止まると、ふっと鳴きやんでしまいます。なのに、歩きだすとまた鳴きはじめるのです。あちらには、こっちが見えているのですね。
 どんなことをしゃべっているんだろう。すごくロの悪いやつだったらどうしましょうなどと思うと、笑ってしまいます。体長7cmくらいの小さな鳥が、「パンくず出せや人間!!」とか言っているかもしれないのです。

 この時期なら、もうニリンソウの花が咲いているかな、と思いながら歩いているのですが、咲いている株はなかなか見つけられません。
 それでも、さらさらと流れる透明な流れを見ながら歩くのは、とてもよい気分です。

 ユリワサビの小さな小さな花はたくさん見たけれど、他のお花にはまだ時期が早かったかな、とあきらめかけたとき、ハナネコノメソウの花がいっぱいに咲いているところに来ました。
 楽しみにしていたニリンソウも。まだ一輪しか咲いていなくてイチリンソウのようですが、ちゃんとつぼみがついています。
 これ道なの?と思いますが、標識は進めといっています(稲荷山コース分岐先)。
 ここから先は沢沿いというよりも、沢の中を歩く感じ。飛び石の上を、気をつけながら歩いて行きます。
 この日は、夕方から雨が降ると天気予報でいわれていたからでしょうか。行きかう人も少なく、とても静かです。
 そこに、冒頭のような声が聞こえてきたのです。
  くく、ここ、きゅ一ん。
声に気づいて、一つ穴を見つけると、目が慣れるのか、次から次へ小さな穴があるのを見つけます。そのどれからも、もう、なんだかくすぐったいような、とてもかわい声がするのです。

  ふきゅ一、
  くく一ん。

 君たち、カエルはゲコゲコいうものではないのか?と言ってみるのですが、彼らはミソサザイと違って、こちらのことなどおかまいなしです。穴の中で少し反響するのでしょうか。ちょっとこもったような、ふわっと響くような。
 あちらでも、少し進んで、またこちらでも。
 いくら聞いていても飽きません。

 高度が上がって道が明るくなってくると、ヤマルリソウが花をつけていました。こんなに小さくても、とてもすてきな水色。春の色です。
 沢を離れると、延々と続くかのような階段が。単調でキツイ登りが続きます。誰が高尾山は初心者向けなどといったのでしょうか。汗だくです。途中に何か所かベンチがありますので、休憩しながら行きましょう。
 長い階段が終わると、1号路と合流します(表参道・1号路分岐)。山頂まではもうすぐです。
 沢沿いにたくさんあったのに、一本も花をつけていなかったアブラチャンが、ここでは咲いていました。日当たりがよい、山頂が近づいてきた証拠です。

3.登頂! そして、いただきます!

 登頂しました! 高尾山の山頂は、広々としていていい気分です。あいにくのくもり空で、富士山は拝めず。
 でも、山は冬の厳しさを脱ぎ捨てて、とても優しい色合いです。しかし、富士山が見えないので、さっさと次に行きます。山で最大の(?)楽しみ、ご飯です。まだ昼食までかなり時間がありますが、ご飯です!
本日のメニューはこちら。ただの袋ラーメンでも、具沢山だと美味しさが増します。本日は埼玉県深谷市飯塚商店の深谷モヤシに、小松菜、長ネギ、エノキタケとチャーシューも入れました。
野菜は刻んでから持ってくると楽です。チャーシューもスライスしておきます。
念のため保冷材を入れてきましたが、山頂に着いても保冷材は凍ったままでした。
気温が高くなってくると生モノは心配です。痛むことをあまり気にせず好きな具材を持ってくることが出来るのも、冬から早春の登山の楽しみです。
 調理に使っているストーブ、イワタニプリムスのP-153は、もう何年使っているのかわかりません。厳寒期でも火力が安定している、頼もしいストーブです。
 今回、ガスカートリッジは小さい容量のものを使いました。二人でラーメンを作ってお茶を入れるくらいでしたら、このサイズで充分です。
 そして、お鍋。登山用の鍋に憧れるのですが、わが家は家庭用の廉価な小さめの片手鍋を愛用しています。取っ手が長くて少し収納に困りますが、山では自分が使いやすいものが一番です。ふたは100円均一で見つけました。食器も密閉容器です。軽くて使いやすければいいと思っています。
 夏を除く季節に山でいただく温かいものって、温かいだけで豪華な気分になるから不思議です。普通の袋入り即席ラーメンが、何倍もおいしく感じられます。
 高尾山の山頂にはお蕎麦屋さんがあるので、わざわざ担いで登らなくても温かいお蕎麦を食べることができますよ。

 おいしくいただいて、しばらくのんびり。この先まで足を延ばすのもいいかな、とも思いますが、それはまた今度にしましょう。

4.下りは4号路から表参道へ

帰りは吊り橋にひかれて4号路へ(4号路分岐)。
 あちこちでスミレが咲きはじめていました。高尾山はスミレの宝庫でもあるのです。
 4号路は広葉樹の広がる、明るくて気持ちのよい森でした。吊り橋はけっこうな高さがあって、少し揺れます。
 上りの6号路も、これまで歩いてきた4号路も、とても静かだったので、表参道に合流したとたん、人の多さにびっくり(表参道・1号路分岐)。同じ山の中にありながら、別世界のようです。これは、高尾山ならではの楽しみかもしれません。

 ケーブルカーには乗らず、表参道を下っていきます(ケーブルカー高尾山駅から表参道・1号路へ)。舗装された道は少し退屈ですが、久しぶりの山歩きにはこれぐらいがちょうどいいです。上りより下りのほうが足腰に来ますからね(笑)。

 ヨゴレネコノメソウが、ひっそりと咲いていました。

5. 下山後にまた、いただきます

 無事下山!(ケーブルカー清滝駅)。
 登りはじめてからここまで、約5時間の山歩きでした。来たときには閉まっていたお土産物屋さんも開いて、にぎやかです。
■実際の所要時間
※登りはカエルに夢中になってしばらく立ち止まったり、写真を撮りながら歩いていたので、ゆっくりしたペースになりました。下りの表参道ではほとんど写真を撮っていないので、早いです。あまり参考にしないでください。
京王線 高尾山口駅――5分――ケーブルカー清滝駅前――10分――妙音橋分岐――14分――水行道場手前分岐――60分――稲荷山コースへの分岐――19分――表参道(1号路)分岐――5分――山頂(90分滞在)――7分――4号路分岐――20分――吊り橋――14分――表参道(1号路)分岐――6分――ケーブルカー高尾山駅――40分――ケーブルカー清滝駅前
 久しぶりの山歩きを終えた自分へのごほうびに、熱々のおまんじゅうをいただいて帰りました。

 本格的な春到来には少し早かったものの、あちこちに春の息吹が感じられる山歩きでした。
やっぱり、山で食べるご飯は最高です。
 次はうどんにします。さて、山はどこにしましょうか。

お気に入りの記事などシェアをお願いします

お気に入りの記事などシェアをお願いします