「センス・オブ・ワンダー」 レイチェル・カーソン 著 上遠恵子 訳 森本二太郎 写真 (新潮社)
「センス・オブ・ワンダー」 レイチェル・カーソン 著 上遠恵子 訳 森本二太郎 写真 (新潮社)
BOOK

レイチェル・カーソン 著 / 上遠恵子 訳 / 森本二太郎 写真(新潮社)

センス・オブ・ワンダー

最初に「この本をロジャーにおくる」とある。本書のなかでいつも著者と一緒だった小さなロジャーは、姪(めい)・マージョリーの息子だ。マージョリー亡きあと、レイチェルは5歳になった彼を養子に迎えている。歴史的な書『沈黙の春』の著者によるこの名エッセーは、「ある秋の嵐の夜、わたしは一歳八か月になったばかりの甥(おい)のロジャーを毛布にくるんで、雨の降る暗闇のなかを海岸へおりていきました(原文どおり)」と始まる。
「センス・オブ・ワンダー」とは、神秘や不思議さに目をみはる感性の意。人にはこの感性が生まれつき備わっているが、これを保ち続けるには、私たちが住む「世界」の喜び、感激などを一緒に発見し、感動を分かち合える大人がそばにいる必要があると彼女はいう。
こうしてふたりは海岸から浜辺、森のなか、丘を探検し、夜の海を眺め、星空や月を見上げる「散歩」にくり出す。エッセー中に挟みこまれたメイン州の自然の写真は、カーソンとロジャーが五感をとぎすまして見たであろう美しい光景と重なり、読者もいつしか驚異に満ちた自然の営み、自然への慈しみ、そして生命に対する畏敬の念を追体験する。(文/向 和美)

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